伝えきれなかった思い

私は大学2年の頃、高校時代の同級生で何となく付き合っていた彼女の友人の女性を好きになっていました。その人は歯学部の学生で1年後輩で長崎市の出身ではなく佐世保市から来ていました。付き合っていた同級生の彼女とは何となく勢いで付き合ったという事もあって、全くのプラトニックであり、キスすらした事もなく、自然消滅状態でした。一方で、私は、その彼女の友人の事ばかり、毎日、気になっていました。決定的になったのは自分が、当時、属していた軽音楽のサークルに彼女が後輩で入ってきてしまった事です。正直、これはまずいと思いました。いつか、自分の思いは悟られるのではないか?と。まぁ彼女に悟られるのは良いとしても、付き合っていた同級生の事をあれやこれや詮索され、自然消滅にしてしまっている事も咎められやしないか?と気が気ではありませんでした。私は当時、19歳で成人にもなっていない貧乏学生であり、彼女はどう考えても、お嬢様。そのうちに、私より2つ上の医学部の先輩が彼女を口説き始めました。ソアラを乗り回していた、これまた、坊ちゃんの医者の卵にどう考えても勝てる気がしなかったし、当時の自分は相当な奥手でした。非常に酒飲みが盛んな時代であり、特にこのサークルは急性アル中を続出させる様な飲み方をしていましたので、彼女に思いを伝えられないもどかしさを、焼酎を煽り、泥酔する事で誤魔化していました。そのうち、自分たちがライブをする機会に恵まれ、学園祭のトリを勤める事になり、相当、気合いを入れて、挑みました。ところが、そのライブは会場も野外のライブハウス版の様なもので、客と自分達の距離は非常に近く、まともに演奏ができない状態。兎に角、酒は飲まされるわ、ひっかけられるわ、どんどんステージに押し寄せてきて、もっている実力を発揮できずに終わった、最悪のステージになりました。自分としては、こんなに出来の悪いステージはなく、落ち込んでいると、ライブの打ち上げに来てくれてた、この彼女だけが、とても良かったと褒めてくれたのです。上手いとか下手とかいう事ではなく、そのパンクな状態をかわしながら、一生懸命、立ち向かって歌っているロッカーの姿が良かったという事らしく、確かに彼女がやっている音楽もハードロックでしたから、何となくシンクロしてしまったのかもしれません。帰りの電車が無くなり、タクシーに乗れる金も持ち合わせていなかったので1時間ぐらいかかる距離を歩いて自宅まで帰ろうとしていたら、彼女は私を1人暮らしのマンションに泊めてくれる言ってくれたのです。でも、絶対に何もしない約束でと言われました。絶対に何もしないと決めていたので、そのまま眠れず、悶々として、朝を迎え、お礼を言って家を出たのですが、この時、彼女は偉かったですねって言ったのです。これは皮肉だったのか、本心だったのか?今、考えてもわかりません。この後、彼女は全く、私と話す事すらなくなりました。ただ、じーっと私を見ている視線を感じる事は何度かありました。彼女は2つ上の先輩と付き合い、その後、私のバンドのドラマーと付き合いだしました。その間、自分の心は隠してただ見守りました。その後、この軽音楽のサークルの事は黒歴史として封じ込め、彼女への思いを振り切るかの様に死に物狂いで大学院に合格し、卒業して、私は新しい彼女を作り、実家を出ました。彼女も数年遅れて、歯科に勤務医として勤めだしたのですが、どうも実家から1分の歯科に勤務していた様なのです。自意識過剰なのかもしれませんが、彼女は私の思いを知っていて、告白を待っていたんじゃないか?とも思います。私の人生の後悔は2つあり、海外出張中だったため、大好きだった祖父を見舞えず、可愛がってもらったお礼もいえず、死に目に会えなかった事と、この彼女に、本当の思いを伝えきれなかった事です。勿論、私は今の妻が大好きで結婚し、パートナーとしても最高だし、とても幸せです。ですが・・夢にこの彼女を見る事があり、やはり、どこか思いを断ち切れていないと思うと、妻に申し訳ないと思います。彼女は53歳。もう、お互い、初老と言ってもおかしくない年齢です。あちらも家庭がおありになり、どこで暮らしているのかもわかっていますが、訪ねていくわけにも行かないので、偶然にでも会えたら嬉しいと思っています。笑い飛ばしながら、正直に思いを伝えられたら最高ですけどね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です